#3メッセージ
これからの夢
取材の最後に、佐藤氏のこれからの夢やメッセージを伺った。
おいしいものいっぱい食べて、おいしい味覚を研ぎ澄まさなければさ、自分のりんごを食べておいしいのか美味しくないかもわかんないじゃん。そういうのは嫌だから、おいしいものを食べ歩くのが大好き。だから日本全国の色んな所に行ってみたい。夢はキャンピングカー生活だよ。
りんごづくりにおいてのビジョンや夢はさ、安定して生活できるようになることだった。そのために自分で販売するっていうことを始めて実際にそうなったから、これからは俺の娘のこと。
このまま継承していくのか、自分がやりたい農業に舵を切るのか分からないけど、俺は彼女の決断した方向を尊重して、応援していきたいなと思ってる。
農業を目指す方へ
様々な人と出会って様々な農業をする理由を聞いてきたけど、俺の場合は既得権だった。農家の長男として生まれた責任と言うか、その中で生活と向き合った時に売り方を考え、宅配という販売方法を選んだ。
新規就農をする人の中には、失敗する人と成功する人が居て、成功する人は売り方をしっかり考えてる。農家は品質の良いものを作ることが全てのように思う人も居るかもしれないけれど、そうじゃなかったということを伝えたい。続けていくためにも、収穫して販売するところまで、生産技術だけではなくその先の経営のところまで見据えて目指して欲しい。
それから諦めないこと。自分も毎年反省があって、少しづつやってみて修正を繰り返して分かってきた。
計画して次に行動し結果が出たら反省、みんな修正がないんだよ。計画・行動・反省・修正ってさ、で、その修正っていうのが実はもう計画と結びついてるんだって。1度だけじゃなく1(いち)の積み重ねでしかないよ。
消費者のみなさんへ
俺のりんごを買ってくれた人とは1回会ってみたいな。
会ってありがとうって頭下げるのが普通の事だと思うからさ。
だから65歳くらいにはそういう旅に行きたい。畑があると長い間家を空けにくいけど、
本当は出たいんだ。
最後に
たくさんの人に支持され「隆昭園のりんごを買いたい」とお客さんに求められている佐藤氏にとって、おいしいりんごをつくることは当たり前でとても自然なこと。
そんな佐藤氏の話は、りんご栽培のこだわりよりも、りんごの売り方、そして農業に限らず、ものごとの理由に「気づく」こと、「想像する」ことの大切さを教えてくれるものだった。
お店で売られている農産物にも、りんごが赤く色づいていることにも、過程や理由がある。そこに気づき目を向ければ、より大切に、美味しく、敬意を持って消費することができるはず。と、商品を選ぶ消費者の在り方についても考えさせられる。
佐藤氏自身が気づける感性を持ち、受け取った情報や出来事をそのままにするのではなく、自分に問いかけ取り組みを続けてきたからこそ、今の隆昭園があるのだろう。
佐藤 隆治Ryuji Sato
- 1974年、農家の長男として生まれる。青森県黒石市にあるりんご農園「隆昭園」代表。妻と三人の娘。母、祖父母の8人家族。家族経営で有機栽培と減農薬栽培を行いながら、自ら集客・販売を手掛ける。現在3ヘクタールほどの農地で多品種のりんごを栽培し、主に宅配と産直市場で直販する。夢のひとつはキャンピングカーでの日本一周。
- 隆昭園(りゅうしょうえん)
- 公式サイト
- 青森県黒石市
- ふじ、王林、つがる、ジョナゴールド、シナノドルチェ、シナノゴールド、シナノスイート、きおう、ぐんま名月、トキ
筆者のプロフィール
- cotonoah
- デザイン、webディレクション、ライティングなどをしています。
大成農材株式会社との出会いをきっかけに農業や有機肥料の素晴らしさ、食の大切さに触れ、伝える方法を模索中。
あとがき
佐藤隆治さんと初めてお会いしたのは、3年前わざわざ青森から広島本社を訪ねてこられた時で、夜お酒を飲みながら農業の現状や今後の展開について熱く語りあったことを、昨日のことのように覚えています。
今回はこちらから青森まで訪ねて行きましたが、忙しい中にもかかわらず、快く取材を受けてもらった上に、とても素晴らしい話を伺ったことで、有機肥料メーカーとしての在り方や、今後のビジョンなど様々なヒントを頂きました。
佐藤さんありがとうございました!
大成農材株式会社 代表取締役社長 杉浦 朗