#2人生の転機
農業をはじめたきっかけ
「農業は結果的にすごい自分に合ってた、本当たまたま。運が良かっただけですね。」
そう話す高倉氏は、高校生の時、趣味を兼ねたアルバイト先のスキー場で、先輩農家と知り合った。
そして20歳の時、先輩の家でのアルバイトに誘われたことをきっかけに農業を始めた。
3年間のバイト期間は、春から秋までずっと多忙な日々だったがその経験が今につながっている。
「先輩がもうめっちゃ手広くやってた。トマトと白ネギ、それにプラス畜産、米があったのかな。「飯を食っていく農業は、どんだけ仕事をしなければいけないんか」っていうのが自然と身についたおかげで、今がこうやって成り立ってるのかなと思いますね。」
生きていくための仕事量を体感した。
当時は自分が農家になるとは全く考えていなかったそうだが、バイト期間を含めると今年でもう15年目。
たまたま声をかけてくれた先輩は「人生の師匠」と呼ぶ人になった。
「申告とか、農業を仕事にするためにやるべきことを全部教えていただいて。もう本当に頭が上がりません。本当に、人生の師匠です。」
バイトから就職、独立へ
その後、農業参入した企業で1年半ほど会社員として働いたが、自分の思うようにはできない、いくらやっても自分に返ってこないという歯痒さを覚えていた頃、丁度良いタイミングで新規就農者に向けた国の助成金(注1)の話があり、独立を思い立った。
農業を始める時には農地、機械、施設など様々な初期投資が必要になり、育てる作物によってもその費用は異なる。
高倉氏は大掛かりな投資をしなくても済むネギの栽培を考えていたが(施設が必要になるトマトは投資額も大きい)先輩に相談すると、トマトを栽培していたハウスが手が回らなくて空いているからと借りられることになった。
それを機に大玉トマトの夏秋栽培農家として独立に至った。
バイトの時は言われたことをただやっているだけだっだが、いざ自分でやるとなると勝手が違った。
分からないことは、先輩や農業をする中で繋がった人たちとの情報交換も活かしながら、良いと思ったものを取り入れ自分なりの農業を続けている。
加入している玖珠九重のトマト部会では、講習会など栽培技術を学ぶ機会がある他、ハウスへのビニール掛けやマルチ張りなど、大掛かりな作業は一緒に取り組むなど、大変な農作業も助け合うことができるコミュニティが力になっている。
紹介された有機肥料
じわじわと感じる効果
大成農材の有機肥料との出会いもたまたまだった。
独立当初は堆肥を入れた後は化成肥料だけで栽培していたが、農協の先輩から面白いものがあるから使ってみないか?と勧められたことが使用のきっかけだった。
「使って1年目、2年目の土づくりの時点でちょっと掘るだけでミミズの数がすごい増えていて、入れたおかげだっていうのが確実に分かりました。年数が経つとだんだんそれが減っていく。でもマルチの中をのぞくと白い菌が生えてる。それはすごくいい菌なんです。」
初めて使った時は、化成肥料とは異なる効果の出方に不安も大きかったという。
「化学肥料の効果は結構すぐに分かるんですよ。有機肥料だとその反応が見えなくて、じわじわじわじわ。動きがすごい非対照なんで、最初は本当に不安でしたね。
でも花落ちとか、しそうでしないんです。ギリギリのところでうまく耐えていくんですね。そのあたりで有機肥料が効いてるっていうのが分かりました。
最初にあの状況を見ると焦ると思うんですけど、そこで不安になって途中で化成肥料を使ってしまうと、せっかくよく育っているところなのにバランスを崩してしまう。
目先の利益なのか、それとも未来への投資なのか。そこの考え方も「有機」と「化成」の大きな違いなのかなって思いますね。」
継続していくことで分かることがある
有機肥料をずっと使い続ける中で、使い方のコツも掴んできた。 高倉氏は、春先の土づくりの段階で「バイオノ有機s」を使い、その後梅雨が明ける前までは「エキタン有機 特選エース」でゆっくりと根っこを育てる。 そして土台がしっかりして、実がたくさん付いてくる夏場のピーク時には養分が多く必要になるため、化成肥料で補う使い方をしている。
「1年、2年で分かることもあるけど、やっぱり継続していくことで分かることってあるんです。 化成肥料を使うと土が傷んで収量が落ちてくることがあるんですけど、大成農材さんの有機肥料を入れて微生物を増やすことによって、化成肥料を使っても収量が落ちないとか、自分の中で答えとして出てきています。」
参考サイト
土壌消毒の話
土の大切さ
長期的な視点で、農園の土も大切にしている。
連作障害(注1)を防ぎ、農作物の収量を維持するための方法として、一般的には土壌消毒をすることが多いそうだが、高倉氏はこれまで一度もしていない。
「僕は絶対土壌消毒はしたくない。やってしまうと良い菌も悪い菌も一回全部リセットして殺しちゃうんです。
大成農材さんの肥料を7年ぐらい使わせてもらってますけど、7年間の積み重ねがゼロになっちゃうので。土のバランスを崩さないように、これからも有機肥料と化成肥料の使い方をしっかり見極めながらやっていこうと思ってます。」
有機質資材を使用する有機栽培の場合、生態系の豊富さを保つことができ、連作障害が起きにくいと言われている。土壌中に多様な菌がバランス良く居ることで、農作物は病害にかかりにくく、かかったとしても被害は広がりにくい。
肥料の使い方や消毒をしないという彼の姿勢は、最初に教えてくれた、サイドビニールを張ることや先手先手で手入れをしていく栽培の工夫と同じく既存の方法にとらわれていない。
世の中に様々な情報があふれる今、自分なりに見極めることについても考えさせられるお話。
簡単なことではないはずだが、「どうしたらもっと良くなるのか?」考え、行動し、見ようとするからこそ、植物の変化に気づくことや自分の選択を信じることができるのだと思う。
参考サイト
(注1) 連作障害- 土壌中には植物にとって有用な菌や有害な菌が存在しており、その良いバランスが保たれていることが、農作物の生育にとって良い土だと言われる。
しかし、同じ作物を同じ圃場で連作することでそのバランスが崩れ、栄養の偏りや病害虫の増加などが生じることによって植物が生育不良となり、収量が落ちてしまう障害のこと。